松本拓巳です。
今回のからの投稿ではドリルについての基礎知識が動画で学べます。ドリルとは←をクリックすると動画が見れます
ドリルの仕様の違いとその特性のちがいについて学びます
ドリルの標準的な先端角はJIS規格において118°とされています。ただし、必ずこの角度でなければならない、という意味ではありません。各メーカごとに用途や実際の使い勝手を考慮しながらそれよりも小さな、あるいは大きな先端角に設定されたドリルが存在します。
先端角の大小でドリルにかかる力の差がどのように表れるのか比較してみましょう。
この2つのドリルの直径は同じですが右側の方が先端角が大きいのがわかります。
2つのドリルそれぞれの切れ刃面に対し垂直方向にFという切削抵抗が発生しています。
お互いに先端角は異なるものの、Fの大きさは両者同じです。
その切削抵抗Fを軸方向に受け止めるのが『スラスト抵抗Tc』で、径方向に受け止めるのが『回転力U』です。
スラスト抵抗とは第1章にある通り、被削材がドリルを押し返そうとする力のことでしたね。赤と黄色で色をつけて比べてみます。
左側の先端角の小さいドリルの方がスラスト抵抗が小さいのがわかります。すなわち、より少ない力で被削材に切り込んでいくことができます。ただし、その反面、回転力Uは大きくなっています。
次に切りくず形状の違いを比べてみましょう。
両者とも一回転に「f」という同じ値だけ切り進む送り量として考えて、発生する切りくず部分を黄色と緑色で色つけしてみました。それらを重ねてみましょう。
先端角の小さいドリルは先端から肩までの切れ刃の長さLが長く、かつ切りくずの厚さ「t」が薄いのがわかります。すると切りくずの幅が広くなり、伸びたままになりやすくなります。加工中に溝に詰まりやすくなったり、ドリル自身に巻きついたりする危険性が高まります。
反対に先端角が大きいと切りくず幅が狭くなり、厚くなるため、自然に亀裂が生じて細かく分断しやすくなります。ドリルの切りくず排出にとっては非常に有利になります。
溝のねじれ角のちがいを見てみましょう。
標準的なねじれ角は30°となっていてそれを基準に強い、弱いと表現します。
どんどん弱くしていくと0°になり、ねじれていない直溝となります。
「ねじれ角」と「すくい角」の関連を説明します。
下の左右ふたつの図を見てみましょう。
左が弱いねじれ角でのすくい角、右が強いねじれ角でのすくい角です。
切れ刃が先端部にあり、中心から外周に向けて底辺に付いているため、溝のねじれ角がそのまま「すくい角」になります。
図にあるように、溝のねじれが弱いとすくい角が小さく、刃先強度・剛性重視になっています。
硬い被削材に有効です。溝のねじれが強いとすくい角が大きく、剛性よりも切れ味重視になっています。軟らかい被削材に有効です。
ナイフや包丁を使う場合に垂直に切るよりも寝かせた方が切りやすいことと同じ原理です。
また、切れ刃は「すくい面」と「逃げ面」で成り立っています。
切りくずはすくい面にそって移動し、逃げ面は逃げ角によってワーク(被削材)に接触するのを防ぎ切削抵抗を減らします。
ドリルの溝の形を見てみましょう。
いわゆる一般型は溝の幅は狭く、深くなっています。その結果、心厚が非常に小さくなっています。ドリル直径から見た割合で10~25%程度です。
ピンクで表した部分は切りくずが収まる空間ですが非常に広く確保されていることがわかります。一般型という名の通り、様々な被削材、機械環境、用途などに対応する必要があるために切りくず処理を重視した構造になっているのです。
それに対し高剛性タイプは心厚がかなり大きくなっています。ドリル直径からみて20~35%もあります。加工中のスピードを上げたり、穴仕上がりの位置精度を向上させるなどのメリットがあります。
ただ単純に心厚を大きくするだけだとドリル中心部のスラスト抵抗が増大し、切りくず排出の性能も落ちてしまいますのでシンニング処理を施すことで対処しています。
平溝パラボリックは主に深穴加工用のロングドリルで採用されている構造です。
大量の切りくずを処理する必要から溝が幅広く、浅くなっています。
また、ドリルたわみを防ぎ、剛性を確保するため心厚は大きくなっています。
これにより剛性と切りくず処理性を両立しています。
一般ドリルの形状は主流である『円すい研削』のほかに刃先精度が有利な
『平面二段研削』がありますがいずれも中心部にはチゼルエッジがついています。
すでに第1章でもふれましたが、ここはまるごと心厚の部分であり、切れ刃の機能は持っていないので加工中にスラスト抵抗が大きくなってしまいます。
チゼルエッジを薄くするには心厚の小さいドリルにすればよいのですが、それはすなわち、ドリル剛性が低下することを意味しますので加工中に穴が曲がって仕上がったり、ドリル自身が折れてしまう危険性も高くなります。
そこで有効なのが剛性を保つために心厚はなるべく大きいままで、チゼルエッジのみを薄くする、『シンニング』処理です。
下の写真の通りシンニング処理を施したあとは黄色で示したチゼルエッジ部分はかなり薄くなっているのがわかります。また、チゼルエッジが薄くなるということは赤で示した切れ刃が中心近くまで確保できるようになる、ということです。
ドリルの切り始めは先端中心部から被削材に接触していくわけですが、シンニングが施されていれば、中心付近の切れ刃がすぐに作用し始めてスラスト抵抗の発生を抑えながらドリルはスムーズに切り込んでいくことができます。
なお、シンニングはチゼルエッジを薄くすることはできますが物理的に完全にゼロにすることはできません。
一言でチゼルエッジを薄くすると言っても、シンニング処理の方法はさまざまです。
『S形』は最も一般的なもので研磨も簡単です。ウェブシンニングとも呼ばれます。
『N形』はシンニング部の空間が広く確保されます。そもそもチゼルエッジは切れ刃の
機能はなく被削材を押しつぶすだけですが、N形シンニングのこの広い空間は押しつぶされた切りくずをすばやく取り除くことができます。研磨も簡単です。
『W形』は切れ刃のほぼ全面を当てる処理方法です。切れ刃の切れ味は鈍くなりますが
欠けにくくなるため、硬い被削材用のドリルに主に採用されています。
『X形』はシンニング部の空間が非常に広いので、心厚の大きいドリルや深穴用ドリルに主に採用されています。
クロスシンニング、クランクシャフトシンニング、スプリットポイント等とも呼ばれます。
『スリーレーキ』は穴精度が向上する特長がありますが、研磨が複雑で難しい方法です。
『R形』はドリル中心部と切れ刃を凸の線で結び、チゼルエッジをゼロに近づけたシンニングです。穴精度が良く、心厚の大きいドリルでもスラスト抵抗を抑えることができます。
これらのシンニング処理は単独で施されることが多いのですが、複数の種類を組み合わせて施されることもありす。
また、メーカによってはここにない独自の方法、呼び名を設定している場合もあります。
以上になります。

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