松本拓巳です。

今回のからの投稿ではドリルについての基礎知識が動画で学べます。ドリルとは←をクリックすると動画が見れます

 

ドリルとはどんな機能を持った工具なのか?そのしくみと最低限覚えておきたい用語などを学びます。

ドリルとは

JIS日本工業規格によれば、『先端に切れ刃をもち、ボデーに切りくずを排出するための溝をもつ、主として穴あけを行うのに用いる工具』と定義しています。
『ドリル』という工具は一般の方々にも比較的なじみの深い切削工具といえるでしょう。
むかし学校の授業で使った経験があるとか、趣味の日曜大工で使う場面があるとか、あるいはテレビアニメや映画の中でそれに似た道具が登場したりなど、どんな姿なのか大体のイメージはつけやすいのではないでしょうか。
ドリルは穴あけしかできない工具です。ですがドリルは真っ直ぐに深く、そのドリルとほぼ同じ直径の穴をあける能力を持っています。簡単そうにみえますがこれは実はドリルが大変優れた工具であることを表しています。
例えばスコップで土を深く掘り下げることを考えてみましょう。スコップの幅や腕の太さより穴を大きく広げずにどれくらいの深さまで掘り下げることができますか?
15cmくらいはできるでしょうか?それでもせいぜい穴の直径の2倍程度でしょう。
穴の入口をすりばち状に広くしないとより深くまでは掘り進むことはできないはずです。
おまけに掘っては外へ土を出し、また掘って・・・を繰り返すわけで、作業能率も決してよくありません。
それに対してドリルは直径の何十倍もの穴の深さにも正確に、能率も確保しながら対応できるわけです。さすがは穴あけ専用の工具ですね。

 

各部の役割と名称(1)

【ドリル各部の名称と役割(1)】
こちらはドリル全体図です。
『直径』は言うまでも無くドリルの直径のことです。ミリ単位で表します。
直径であることを表すために数値の前にギリシャ文字φ『ファイ』を記す表記方法が便利です。読み方は『まる』とも言います。
『ボデー』は被削材を切りくずとして削り取り、穴出口へ送り出す一連の作業を行う部分です。JIS用語では『ボディ』ではなく、『ボデー』が正しい表現です。
『シャンク』は機械に取り付ける時に保持するための柄の部分です。多くのメーカがここにドリルの直径やその他の情報を表示しています。
なお、ここの直径をシャンク径といいます。
『溝』は切りくずを外へ送り出すための通り道でたいていの場合、らせん状にねじれています。またその軸方向への長さを『溝長』といいます。
刃ではありませんからここを刃長と表すのは大きな間違いです。
なお、用途によってはねじれの無いストレート溝のドリルも存在します。
『ランド』はボデーのうち、溝を除いた部分を指します。
『ねじれ角』はねじれ溝が軸に対して持つ傾きです。第3章で詳しく学びます。
『先端角』はドリル先端の二つの切れ刃のなす角度のことで言い換えるととがり具合を表すものです。第3章で詳しく学びます。

 

各部の役割と名称(2)

【ドリル各部の名称と役割(2)】
『切れ刃』はドリル先端のとがった部分にあって実際に被削材を切削する部分のことです。赤い点線で表しています。
『マージン』はドリルの外周の二番取りをしていない円周面のことです。
図のようにもし二番取りがあると逃げとよばれるすき間が付きますが、それがないということはマージンの円周面はそのドリルにとって最も太い直径部分となります。したがって切削中に穴の内側の壁とフィットして、安定して切り進むようガイドできるのです。
『ウェブ』とは溝底の部分です。外観からはわかりにくいのですが一般的なドリルは先端からシャンクに向かって溝はだんだん浅くなっていき、ウェブはなだらかに太くなる構造をしています。
『心厚』とは溝底のウェブ先端での厚さのことです。第3章で詳しく学びます。
『チゼルエッジ』はドリルの二つの切れ刃逃げ面の交わるところ、すなわち先端中心部の大工道具の『のみ』のように平らな部分を指します。切る仕事には全く役に立たない部分です。
『シンニング』はそのチゼルエッジをなるべく薄くして、中心付近まで切れ刃を確保するための処理を指します。第3章で詳しく学びます。

 

どこで削っている

ドリルは穴あけ専用の工具ですが、いったいどこで切る仕事をしているのでしょうか?
いうまでもなくドリルの中で真っ先に被削材に触れる部分、すなわち先端にある『切れ刃』が、その名前の通り、最も重要な仕事を担っています。
図では赤い点線で示しています。
ドリルは尖っていますから切れ刃が被削材を切り始めた瞬間はまだ穴の径は小さいわけですが、だんだんと切り込んでいくにしたがって切れ刃の作用する部分もだんだん太くなっていき、最も外周側の切れ刃が作用したところで削り取られた穴の直径は最大となります。
ただし、切れ刃だけが仕事をしているわけではありません。
切る機能は持っていませんが『マージン』も重要な役割を担っています。
図で緑色で示した部分がマージンです。
切れ刃の最も太い部分とくっついてドリル外周に円弧を描いているのがわかります。
このマージンには二番取りがされていませんから切れ刃で削り取られた直後にすぐ穴の内側の壁とフィットしてなぞりながら進んでいくことになります。
このなぞる作用がドリルがまっすぐに切り進むために必ず必要なガイド機能となるのです。
もしマージンがない場合、切れ刃の切る機能だけが働くことになりますから、穴が曲がってあいてしまったり加工中のドリルがびびりとよばれる振動を起こしてしまい、穴の仕上がりが汚くなったりドリル自身を傷めたりする危険性が高くなります。
主役である切れ刃が純粋に切る仕事に専念できるのは陰で支えるマージンという存在があってのことなのです。

 

ドリル切りくず生成過程

被削材にドリルを貫通させる穴あけの際に切りくずがどうやって生じるのか見てみましょう。
食付きはドリル先端がまず接触する位置『A』からだんだん切れ刃が作用する部分が太くなっていき、
最も外周側が作用する位置『B』までの段階です。
『B』の2か所の赤い矢印の部分は一般的にドリルの『肩』と表現されることもあります。
ドリルの溝は言うまでも無く切りくずを通すための空間なのですがこの段階ではまだ被削材の上面にかなり広い空間がありますからここも切りくずを処理する場所として使われることになります。
切れ刃のすくい面に沿って巻き上げられた切りくずはドリルの溝をたやすく飛び出して、この広い空間を活かして連続した円すい状のカールのまま成長していきます。そしてやがて振り回されるうちに遠心力が働いて引きちぎられることになります。なおこの時点ではマージンはまだ作用していません。
次の段階の中央『C』ではドリルは先端の切れ刃と外周のマージンが共に100%作用している段階です。
この時の切れ刃は被削材の内部深くに入ってしまっているので自分自身であけた穴壁に拘束された狭い空間の中で、まさにドリルの溝の空間だけを使って切りくずを処理しなくてはなりません。
シンニング付きのドリルでは外周から中心付近まで長く切れ刃が確保されていますが緑枠の図の通り、切れ刃は直線ではないため、切りくずの流れ出る方向は切れ刃全体でみると一定ではありません。
あっちの方向へ流れていこうとする切りくずとこっちの方向へ流れていこうとする切りくずが引っ張り合うことになるため、お互いが引き裂かれるように亀裂が生じ、切りくずは分断していきます。
よほど極端に薄い板状の被削材形状でもない限り、穴あけ加工全体でみるとこの中央『C』段階における切りくずが最も多く発生します。
最後に抜け際段階に入ります。『D』でドリルの先端が被削材を突き破り始める瞬間は食付きAのように円すい状の切りくずが発生しますがその後はもう切れ刃中心で切削することができません。
あとは外周に近い切れ刃の薄い幅でわずかに残った被削材を切り進めていくだけですから切りくずは巻くほどの量もなく、糸筋状になってやがてドリルの外周が完全に抜け出る『E』に到達したら途絶えます。ドリルの切削工程は完了です。
もし貫通させる必要がない加工ならば中央『C』の途中でドリルが引き返すことになるので当然ながら抜け際の切りくずは発生しません。同じドリルでたった一つの穴あけをするだけでも切りくずはこのように加工工程のなかで様々に形を変えて発生します。
被削材の種類とその硬さ、使うドリルの種類、加工条件が変わればさらに大きく違いが出てきます。

 

ドリル加工の特異性

ドリルは先端の切れ刃で生じた切りくずを溝を伝ってシャンク側に送り出していきますが、穴が深くなればなるほどその距離A~Bは長くなりますので溝のなかで切りくず同士がからみついて詰まってしまう危険性が出てきます。
また、切れ刃はドリルの先端にあって穴の奥深くにありますが、安定した性能をキープするためには切削油をかけることが必須条件です。
ただかければよいというものではありません。ドリルは回転していますから切削油の量が極端に少ないとドリルの遠心力の作用で溝の中に入らずにはじき飛ばされてしまいます。
よって、十分な量をかけることが必要です。
さて、切削油を注ぎ入れるための入口はBになりますが、ここは切りくずにとっての出口でもあります。満員電車から降りてくる沢山のお客さんの流れに逆らって無理やり乗り込もうとしているのと同じこで、限られた空間をめぐってお互いに過酷な闘いを繰り広げているわけです。
ならばドリルの溝を広く、深く設計すれば切りくずも切削油もゆとりをもって同じ空間に収められる、という考えも出てくるでしょう。
そのためにはドリルのウェブをうんと細くする必要がありますが
これはドリルの『剛性』、すなわち丈夫さを極端に低下させることを意味しています。
もしそんなドリルを使えば加工中に被削材から受ける力、すなわち抵抗に耐えられずにたわんで穴が曲がってあいたり、ひどい場合はドリル自体が折れてしまう結果につながります。

 

切削抵抗

AとBの『きり』を見比べてみましょう。
どちらがよく切れそうですか?答えは簡単、Aですね。
ではBはなぜ切りにくいのでしょうか?
一言で言えば先端が尖っていないから食い込みにくい、という理由になりそうですね。
これをドリル的な表現に置き換えてみると、先端角180°により『スラスト抵抗』が大きいから、ということになります。このスラスト抵抗という言葉はドリルの性能を表現する際によく使われる言葉で、ドリルの進行方向と反対向きにかかる抵抗の力のことです。
簡単に言うと被削材がドリルを押し返そうとする力のことで具体的に数値化して表現することができます。
えっ?ドリルの先端は必ず尖っているはずでは・・・と思われる方も多いと思います。実はそうではないのです。
黄色で示した部分が尖っていない平らな部分です。ここは大工道具の『のみ』に似ていることからチゼルエッジと呼ばれています。
ドリルの先端のしかも真っ先に切り込んでいくべき肝心な場所にもかかわらず、一般的なドリルの先端中心部には必ずチゼルエッジがついています。切削の機能からみると全くメリットはないのですがドリルを設計する上でどうしてもゼロにはできない部分なのです。
実際のドリル加工中は被削材を押しつぶして両側の溝に押しのけながら進んでいるだけです。緑のスラスト抵抗データグラフにおいても切れ刃の値の低さに比べて、チゼルエッジ部分だけが極端に値が高くなっているのがわかります。

 

拡大代

直径φ10のドリルを使ったのにφ10ぴったりの穴が開かなかったらどう思いますか?
実はこの現象はドリル加工においてはごく自然なことです。一般的にはドリルの直径よりも大きく仕上がる傾向になります。その大きくなる量のことを『拡大代』といいます。
その理由を見てみましょう。
まず、ドリルの取り付け方が原因となるケースです。
ドリルのシャンクを機械に取り付ける際にはどんなに気をつけてセッティングしても目に見えないくらいのわずかな傾きが生じます、切れ刃はシャンクから遠く離れた位置にあるので回転させた時にその傾きが切れ刃の動きの大きな誤差となって穴を大きく仕上げることになります。
また、ドリルの構造にも原因があります。
汎用のハイスツイストドリルは切りくず排出のための溝が広く深くとってあるため心厚が非常に小さく、工具としての剛性すなわち丈夫さが十分確保されていません。ですからたわんで拡大代が増し、結果として仕上がり穴径が10.1mm程度まで大きくなることがあります。
心厚を大きくしたり、工具材料をハイスからもっと硬い超硬に変更すれば拡大代は減り、仕上がり穴径はドリルの直径にかなり近い寸法に近づきます。
被削材の特性が原因で逆に穴が小さく仕上がる場合もあります。
例えばアルミやプラスチックを加工した時によく見られる現象です。
ドリルが細くなったわけでもないのになぜこうなるかというといったん切り広げられた穴が縮んで元に戻ろうとする作用が強く働くためです。
こうした場合は、わざとφ10より大きい直径のドリルを選ぶという手法が有効です。
このように拡大代はさまざまな原因によって仕上がり穴径に影響しています。

 

以上になります。

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